大泉病院の概要

クロザピン治療(治療抵抗性統合失調症)

大泉病院は、クロザピン(商品名:クロザリル®)を使用できる「CPMS登録医療機関」です。クロザピンは、複数の抗精神病薬を十分な量、十分な期間使用しても症状が改善しない「治療抵抗性統合失調症」に対して、唯一有効性が認められている薬剤です。国内のデータでは、治療抵抗性統合失調症の方にクロザピンを導入すると約6割もの方に一定の改善が見られています。
 

治療抵抗性統合失調症とは

統合失調症の患者さんの約2〜3割は、複数の抗精神病薬を順次適切に使用しても十分な効果が得られないと報告されています。このような状態を「治療抵抗性統合失調症」といいます。
この「治療抵抗性統合失調症」には、以下の2つの場合があります。
  • 反応性不良:2種類以上の抗精神病薬(うち1種類以上は非定型抗精神病薬)を十分な量(クロルプロマジンに換算して1日量600㎎以上)、十分な期間(4週間以上、ただし定型抗精神病薬の場合は1年以上の治療歴が必要)使用したにもかかわらず、日常生活・社会生活に支障をきたす程度の症状が残っている場合
  • 耐用性不良:非定型抗精神病薬(リスペリドン、ペロスピロン、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾール、ブロナンセリン、パリペリドン、アセナピン、ブレクスピプラゾール、ルラシドン)のうち2種類以上による単剤治療を試みたが、コントロール困難な副作用(遅発性ジスキネジア、遅発性ジストニア、パーキンソン症状、アカシジアなど)のために、有効な用量まで抗精神病薬を増やすことができない場合
 
これらは日本全国統一の基準に基づいており、担当医がこれまでの薬剤治療歴などを元に詳細な評価を行い、クロザピンの適応かどうかを判断します。
 

クロザピン(クロザリル)とは

クロザピン(商品名:クロザリル®)は、「古くて新しい薬」です。
1969年にオーストリアで初めて使用承認されて以来、欧米各国で広く用いられました。しかし1975年にフィンランドで8例の死亡例を含む16例の無顆粒球症(血液中の白血球数がゼロに近くなり、感染症の危険が増す状態)の報告がなされ、日本を含む各国で開発と販売が中断しました。その後、定期的な血液検査を義務づけ、一部の国で開発・販売が継続されたところ、無顆粒球症による死亡例は激減し、なおかつ統合失調症の難治例にも有効であり、他の抗精神病薬よりも遅発性ジスキネジアをはじめとした副作用が少ないこともわかって、アメリカ、イギリスを皮切りに各国で使用再開されたことから、日本でも2009年から処方可能となりました。2026 年2月末時点での国内使用患者数は26,006 名に上っています。
クロザピンは、陽性症状(幻聴・妄想)だけでなく、陰性症状(意欲低下・感情の平板化)や認知機能障害にも効果が期待できます。また、統合失調症患者さんの自殺リスクを低下させることが報告された唯一の抗精神病薬でもあります。水中毒、遅発性ジスキネジアなどに対する効果も期待されます。
当院ではこれまで累計50例以上の導入実績があり、長年の引きこもり生活から解放されて就労に至ったケースや、自殺企図や入退院の繰り返しだった方が自立してデイケアや作業所に通えるようになったケースなど、多くの改善事例が見られています。
 

大泉病院のクロザピン治療体制

クロザピンは、その高い有効性の一方で、適切な管理が不可欠な薬です。大泉病院では安心して治療を受けていただけるよう、以下の体制を整えています。
 
CPMS登録
大泉病院はクロザリル患者モニタリングサービス(CPMS)に登録された医療機関です。クロザリル適正使用委員会が認定したCPMS登録医がクロザピンを処方します。
多職種チーム
精神科医・内科医・薬剤師・看護師・精神保健福祉士・作業療法士・公認心理士・栄養士などが連携した多職種チームで情報を共有しながら治療にあたります。
血液検査・モニタリング
CPMS規定に基づいた定期的な血液検査を実施します。重篤な副作用の早期発見・対応のため、治療開始から26週間は特に厳密な管理を行います。
内科連携
万一の副作用(無顆粒球症等)に迅速に対応できるよう、糖尿病内科・血液内科との連携体制を整えています。大泉病院は慶應義塾大学病院血液内科と提携しています。
治療実績
2019年のクロザピン治療開始以来、2026年5月末時点で累計50例以上の導入実績があります。

主な副作用と安全管理

クロザピンは高い効果をもつ一方で、他の抗精神病薬と比べて注意が必要な副作用があります。事前に十分な説明を行い、患者さん・ご家族のご同意をいただいたうえで治療を開始します。
 

特に注意が必要な副作用

  • 無顆粒球症・好中球減少症:白血球の一種である好中球が著しく減少する状態。感染症のリスクが高まります。定期的な血液検査で早期発見に努め、国内での死亡例は報告されていませんが、無顆粒球症は1~2%の割合で発生すると言われています。
  • 高血糖・糖尿病の悪化:定期的な血糖検査を行います。軽微な血糖上昇を含めると10%以上の発生率が報告されています。
  • 心筋炎・心筋症:発生頻度は決して高くはありませんが、治療開始初期(3週間程度)に特に注意が必要です。発熱や風邪のような症状から始まることが多く、続いて胸痛・息切れなどの症状が出た場合は要注意です。
  • 便秘・腸閉塞:腸閉塞にまで至るケースはまれですが、他の抗精神病薬に比してクロザピンではその頻度が高いと言われています。便秘は下剤等の併用で対応可能な場合がほとんどです。

その他の副作用(比較的多くみられるもの)

  • 強い眠気、流涎(よだれ)、体重増加、けいれんなど

 
副作用については、開始前の説明で個別に丁寧にご説明します。気になることは何でも遠慮なくお申し出ください。

クロザピン治療の流れ

  1. 受診・適応評価:外来または入院中に担当医が治療抵抗性統合失調症の基準に該当するか評価します。初回受診時はご家族の同伴をお勧めします。
  2. 事前検査:血液検査・心電図・脳波など、治療前に必要な検査を行います。
  3. 説明と同意:担当医・薬剤師から有効性、副作用、治療スケジュールについて文書と口頭で説明します。
  4. 入院・導入:クロザピン治療は、CPMS規定により入院で開始することが義務づけられています。血液検査を行いながら、プロトコルに則って少量から少しずつ増量します。導入後原則18週間は入院での管理が必要です。
  5. 退院・外来移行:至適用量までの増量が完了し、安全性にも問題ないことが確かめられたうえで、開始後最短4週目から自宅外泊が可能となります。条件が整えば4週目以降自宅退院が可能となる場合もあります。退院後は外来通院に移行しますが、定期的な血液検査が必要です。通院先はCPMS登録医療機関に限られるため、紹介元の医療機関が該当しない場合は通院先の変更が必要になる場合があります(大泉病院はCPMS登録医療機関であるため、転医の必要はありません)。

患者さん・ご家族の方へ

 クロザピンは他の抗精神病薬よりも明らかに効果が高い一方、他の抗精神病薬では起きにくいような重篤な副作用が生じる場合もある「両刃の剣」です。日本国内では欧米諸国をはじめとした諸外国よりも管理体制が厳しく、処方できる医療機関も限られているため、クロザピンの使用頻度はまだまだ低い状態です。
 しかし、世界的常識としてはクロザピンは病気が始まってから早期に使用した方がより効果が期待でき、できるだけ早く導入すべき薬剤と考えられています。副作用への不安から治療をためらわれる方も多くいらっしゃるかと思いますが、適切なモニタリング体制のもとで管理すれば、安全に使用できる薬でもあります。
 日本のCPMS規定では2種類以上の抗精神病薬を十分に試すことが事前に求められますが、皆さんの内服している薬、これまで内服してきた薬がそれに当たるのか、ご自身で判断することはなかなか難しいのではないでしょうか。現在他の医療機関に通院中・入院中の方でも、ご相談のみのご来院は可能です。まずはお気軽にお電話ください。
 

医療機関の皆様へ(紹介・転院のご相談)

大泉病院では、他の医療機関からのクロザピン導入を目的とした転院・入院紹介を受け付けています。
紹介ご検討の際は、下記の地域連携室までFAXまたはお電話でお問い合わせください。初回はご家族のみの受診でも対応可能です。

 
地域連携室 電話:03-3924-2111(代表) 受付時間:月〜土 9:00〜17:00
 
なお、CPMSに登録されていない医療機関の先生方からのご紹介の場合、当院でのクロザピン導入後の通院先は変更となりますが、かかりつけ医療機関がCPMS登録をされた際には、外来通院を紹介元医療機関へ戻す対応も可能です。

 

よくある質問(クロザピン)

Q. クロザピンを試したいが、今の主治医に相談しにくい。

A. 当院の外来にご相談にいらしていただけます。セカンドオピニオン的なご相談にも対応しています。現在の主治医の紹介状(診療情報提供書)をお持ちいただくとスムーズですが、お持ちでない場合もお薬手帳などをご持参いただければご相談は可能です。
 

Q. 入院期間はどのくらいですか?

A. CPMS規定により、治療開始後は原則として18週間(約4か月半)の入院が必要です。副作用の発現リスクがある期間をしっかり管理するためです。条件が整えば内服開始後4週目以降に自宅外泊や早期退院が可能な場合もあります。
 

Q. 他の病院でクロザピンを使っていますが、転院できますか?

A. ご相談ください。転院の可否は状態や状況によって異なります。地域連携室(03-3924-2111)にお問い合わせいただくか、担当医からFAXにてご連絡ください。
 

Q. 副作用が怖くて踏み切れません。

当院では治療開始前に、有効性と副作用の両方について医師・薬剤師から丁寧に説明します。治療に同意されてからの開始となりますので、納得ゆくまでお話しください。また、いつでも同意を撤回することができます。

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